肩を震わせながら泣いた。
凍てつく海岸で坊さんが吐いた熱いセリフ。
母親であることを気丈に隠し、娘に送った人生のアドバイス。
子持ちの女性と結婚すると息子に告げられ、
納得いかない主人公を大芝居でいさめる幼馴染。
不器用な父親とその父親に似つかわしくない息子の半生を描いた、
岡山が生んだ名作家、重松清の「とんび」に感動し、読みながら泣いた。
そして、この感動をひとりでも多くの人と分かち合いたいと思い、
まずカミさんに、「これ読んでみー、ええぞー」と手渡す。
後日、読み終えたカミさんは「まあまあ」と一言。
「まあまあ」……ア・リ・エ・ナ・イ・!! 私は震えながら泣いたのに……。
「男と女は泣けるツボが違うけん」、不満そうな私にカミさんのやさしいフォロー。
それならばと、次からは男性に絞って読んでもらうことに。
するとお得意先のデザイナーさんから「とんび良かったよ」と、
待ちに待った私の要望通りの感想が返ってきて、
「泣けました?」と聞くと、「泣けました」との答え。
「でしょう! いい本ですよね!!」。
感動の共有は、それ以外ではつくり出せない心地よい親近感を生み出す。
そんなお気に入りの「とんび」が、NHKでドラマ化されるという。
これは見逃すわけにはいきません。さっそく録画予約。
後は放送を待つのみだったのです。
俗に「原作本を超える映像は創れない」とよく言われますが、
どうやら今回もあっけなく超えられなかったようで……、
期待していた分、残念でしかたがありません。
とにかくキャスティングがマズかった。
しかもマズかった原因の主犯格が、キョンキョンであったことが私には痛かった。
よりによって物語のキモとなる役どころをキョンキョンに演じさせるとは、
キョンキョンはハメられたようなもの、いや完全にハメられたのだ。
キョンキョンはなにも悪くない、
だってキョンキョンは、なんてったってアイドルなんだから……(古)。
キョンキョンにドラマなんて尺が長すぎます、
15秒や30秒のCMがピッタリなのです。 なのに……
人間の想像力とはつまらないもので、
あれ以来「とんび」を思い出すと、
自動的にキョンキョンのあの演技が頭を支配してしまいます。
この状況を打開するためにも、
新しい本を読まなければなりません。
念を押しときますが、キョンキョンに罪はありませんから。