東京上野にある国立科学博物館でラスコー展を見てきました。
ラスコーの壁画は、
1940年に飼い犬を探して潜り込んだ少年たちによって発見されたそうです。
今から約2万年前、フランス南西部のヴェゼール渓谷にあるラスコー洞窟に
クロマニョン人の手によって描かれました。
世界最古ではないものの、現在発見されている壁画の中では群を抜いて大規模で
しかもクオリティも高く保存状態も良いので世界的に有名になっています。
1979年に世界遺産に登録され、現在は壁画を保存するため非公開となっています。
展示は壁画だけでなく、洞窟壁画の発見と保存の経緯や洞窟のミニチュア模型、
壁画を描いたクロマニヨン人たちの暮らしや壁画の描かれ方などに関する解説、
壁画を描くのに用いた道具などの展示もあります。
最初に出てきた模型がこちら。
これが何なのか分かりませんでした。
白くモリっとしたもの。
これ、ラスコー洞窟の模型だったんです。
横穴から見ると、こうなってます。
ラスコー洞窟の内側の形を復元したもので、外の形は意味がなかった。
しばらく外側ばかり眺めていた私、鈍感すぎる(笑)
実物大壁画。
仄暗い灯りの中、どーんと壁画が待ち構えています。思っていたより大きい。
しばらく待つと、照明が落ち、真っ暗に。
「線刻」が青くライトアップされて浮かび上がり、とても幻想的。
しかしスマホのカメラじゃ微塵も伝わらない。
仕方が無いので公式から写真お借りしました。
実際の化石骨をもとに復元された生体復元写真のパネル。
<左>ネアンデルタール人(6万年前)<右>クロマニョン人(3万年前)。
クロマニョン人、カッコよすぎやろ(笑)
こちらはクロマニョン人の等身大模型。
資料によると、身長が男性で175センチ、女性で165センチぐらい。
頭飾りやブレスレット、高度な裁縫技術を用いた衣服や毛皮。
ネアンデルタール人の文化では見られない狩猟具。
顔の造形はほぼ現在のヨーロッパ人の特徴を備えています。
動物の毛皮は本物っぽいし、微細な顔の皺や産毛まで再現されていて
これは生々しすぎて背筋がゾワゾワしました。
ちなみに私が小学生の頃は、ネアンデルタール人が進化したのが
クロマニョン人だと教えられましたが、現在では別の人類であると考えられています。
つまり、ゴリラの進化系がオランウータンではないのと同じで。
ただ、交雑はある程度あったようですね。
現代科学では化石人骨のDNA分析からそこまで判ってしまうんですね。
今回のラスコー遺跡で、出色だったのは洞窟内で絵を描く際に使われたこのランプ。
現在確認されているモノでは最古の照明器具 。
猿人の頃から火は使っていたようですが、
意図して「照明」として使った証拠はこれより古いモノはないそうです。
なぜ彼らは灯りを使ってまで真っ暗な洞窟に絵を描き残したのか。
想像をかきたてられますね。
展覧会全体の感想としては、
科学博物館の展示なので美術やアートとしての側面よりも
学術・研究の対象としての側面の方が強いように思いました。
主催の意図も壁画の美しさや偉大さというよりは
その描かれた方法や目的、描写対象やその意味などへ向けられている印象です。
実物大壁画については洞窟内部の再現ではなく、
主要部分を断片的につなげてひとつの空間にまとめているので
洞窟のスケール感は物足りない。
線描を光で浮かび上がらせて見せるために
部屋の照明が暗くなったり明るくなったりを繰り返すので、
じっと集中して壁画を見ているのが難しい感じ。
壁画そのものをそのまま見せてくれればそれでいい、余計な解説や理屈はいらない、
と思っている自分のような天邪鬼にとってはちょっと物足りない、というか物多過ぎ(笑)
それぐらい内容の充実した展示だったという事で。
しかし、再現された壁画そのものは本当に素晴らしかった。
今はもう叶う事はありませんが、もし実物をこの目で見ることができたら、
きっと感動の涙に打ち振るえているでしょう。