キン肉マン

以前、仕事で携わったコトもあり、新刊コーナーの本に反射的に手が伸びた。
ゆでたまご著「火事場の仕事力」。

ほとんどの新書の表紙には、これを読めば大丈夫と言わんばかりの
上から目線のフレーズが表示されているが、
この本の表紙にはデカデカとキン肉マンが描かれていて異彩を放っている。
題名もキャラクターが発していたキメゼリフをもじったモノで、
高尚さのカケラも感じさせない。
とにかくお仕事でお世話になったキン肉マン、読むことにした。

キン肉マンは、私より少し先輩の二人が高校を卒業してすぐに連載をはじめた漫画。
ということは、若干18歳での連載デビューということ。
そう言えば、お得意先のクリエイターの方から、
「どうしてキン肉マンって表記になったか知ってますか?」と聞かれ、
さぁ~って首を傾げていると、
「筋肉の筋って字が書けなかったから、カタカナのキン肉になったんです」
と教えてもらった。

確か私が中学生の頃に連載が始まった思うが、
当時はイラストもストーリーもお世辞にもプロと呼べるレベルには
達していなかったと思う。
それが今では、日本を代表する稼げるキャラクターに成り上がったのです。
この本の中には、その辺りの手さぐりで連載がはじまった当初の夢と苦悩や、
グングンと技術が上達していく手応えや喜びが詳しく語られています。

また、キン肉マンという漫画には、「忘れ去られた10年間」がありました。
1979年の連載開始から、人気絶頂期に惜しまれつつ87年に連載を終了。
それから再び1998年にプレイボーイに姿を現すまでの約10年間。
それは、まさに悪夢の10年間であったと語られています。
そう、ゆでたまごの二人は、天国と地獄を経験していたのです。

ちなみに、地獄から復活できたのは、高卒の若者二人が漫画家デビューできたのと同様、
周りの人に助けてもらったからと、正直に語られています。
どん底を知り、達観したからなのでしょう、
とにかくこの本は全編を通して著者の口調にまったくおごりがありません。
さらに、各項目が基本的に見開き2ページもしくは4ページで展開されているのですが、
どの項目も最後の行までしっかり文章が書かれていて、
著者の構成力と几帳面さが伺えます。

漫画と広告デザイン、考え生み出すコトには共通するモノも多く、
参考になりそうなフレーズを抜粋させていただくと、

先見の明とは、知性ではなく好奇心から生まれます。
すなわち珍しい物や未知の物に興味を持つ心。
何か好きな分野の事をザッピングしてみて、その中で少しでもわからない、
気になった物があればそれをトコトンまで徹底的に調べ上げる。
するとその調査過程の中に驚くべき大ヒットの秘密が埋もれているものなのです。

もう一つ。

弱った時に人を最終的に突き動かすのは、強い意志……だと理想的ですが、
残念ながらほとんどの場合は、実際そうではありません。
そういうどうしょうもない時に人を突き動かすのは、
意地や反骨精神、もしくは恐怖心といった負の感情です。
それを自分の中に演出するためにも、本気で実現したい事は、
退路を断つために他人に公言することです。
人に知らせることで、自分の中に大きな決意の芯を打ち立てるわけです。

この本を読み終えた後、イラストを担当しているスタッフに渡しました。
はたして、彼はどのような感想なのか……そろそろ聞いてみようかな?


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