7月14日は「求人広告の日」でした。
1872年7月14日「東京日日新聞」に
日本初の求人広告が掲載されたことが由来となっています。
さて、「伝説の求人広告」というものをご存知でしょうか?
1900年にロンドン新聞で
探検家アーネスト・シャクルトンが出した求人広告です。
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求む男子。
至難の旅。
僅かな報酬。
極寒。
暗黒の長い日々。
絶えざる危険。
生還の保証なし。
成功の暁には名誉と賞賛を得る。
−アーネスト・シャクルトン
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人類初の南極大陸横断成功へ向けた隊員募集。
この求人広告には、なんと5000人もの応募があったそうです。
この話を知ったのは
デザインの仕事を始めて5年ぐらいは経った頃、
それなりにキャリアを積んだであろうと思っていた
私にショックを与えたわけです。
こんなたった数行の文章で、しかも
「つらい仕事です」「給料低いです」「死ぬかもしれません」と、
どれをとってもメリットなんかないのに。
求人広告といえば大衆に向けて広く呼びかけるもの、
そう考える人は多いと思います。
ターゲットを絞るほど応募数は減る、
だから応募をとにかく集める、
選考するなら1人よりも10人、
10人よりも100人、
多くの人が集まる広告の方が良い求人広告。
私もそう思っていました。
しかし、意外にもターゲットを絞るほど「力のある広告」になり、
大きな反響に繋がります。
求人広告で「誰でも大歓迎」と書いたところで、全員が応募するでしょうか?
現実では、老若男女誰でも応募するような求人広告は稀です。
求人する側にとっては、10万人の応募ではなく
「1人の良い人材」に価値があります。
10万人の群衆の中から、たった1人に注目してもらう為にはどうするか。
ターゲットを見極め、インパクトのある広告を作ることで
「話題」「魅力」「印象」などの効力を発揮したほうがいいわけです。
10万人にラブレターをばら撒くよりも、
「私が求めるのはあなたです!」
と一人にプロポーズしたほうが、大きな反響を得るという事です。
アーネスト・シャクルトンの求人広告で欲しかった人物像は
「どんな過酷な事態にも前に進める強靭な精神」を持った人。
本当に危険な旅ゆえに、本当に乗り越えられる人材だけに応募させる。
多くの人に呼び掛けるのではなく、
本当に採用したい人物に直接呼びかけハートを掴む、
至極のキャッチコピーだったわけです。
この方がどこまで表現技術を意識したのかはわかりません。
単純に自身の想いをそのまま書いただけなのかもしれません。
それでも100年経った今でも広告業界で参考にされている
「伝説の求人広告」は、やっぱりすごい。