めでたいことに、昨年の11月スタッフにカワイイ女の子が産まれた。
スクスク成長してくれることを祈るとともに、責任の重さを再認識させられる。
そういえば、昨年小さな女の子にまつわる忘れられないシーンに出くわした。
ある雨の日、多くの喫煙者がそうであるように、タバコを買うためにコンビニへ寄った。
(あの厄介なタスポってヤツのおかげで、コンビニはえらい得をしていると思う)
入口で黄色いカッパを着た小さな女の子とすれ違った。
そのブカブカ具合がとってもカワイかったのだが、女の子の手には、
お菓子コーナーに子ども目線で設置してある小さくて黄色い買い物カゴが握られていた。
あれ?この子、店のカゴを外に持って出ようとしてるぞ、と思ったとたん
「○○ちゃんダメでしょ! それはお店の大事なモノでしょ!」っと赤ん坊を抱いた女性の声。
どうやら母親のようで、娘の異変に気づき背後から叱責を浴びせている。
よかった、よかった、と安心しつつ私はコンビニの中へ。
そして、ここでいつものジレンマ。タバコだけを買ってさっさと立ち去れないのである。
「オジさん、うちはコンビニなんすヨ、タバコだけならタバコ屋で買ってもらえないっスカ」
という幻聴に、欲しくもない何か一品とタバコをセットで購入してしまうハメに……。
あの日も案の定、カウンターに直行できず、一旦ドリンクコーナーを経由する
切ないコンビニ半周ルートを辿り、お目当てのタバコをゲット。
いつものゆる~い後悔にさいなまれながら、店を後にしようとしたところ、
例の親子がまだもめていたのである。
しとしと雨が降る中、買い物カゴを握りしめたカッパの女の子が私の車の横でうつむいて微動だにしない。
母親は片手に赤ちゃんを抱き、もう一方の手に傘を持ち娘の行為をたしなめている。
私は車に乗り込みたいのだが、女の子が佇んでいるのが運転席側なので乗れない。
母親はそんな状態の私に気づいているにも関わらず、そんなこと知ったことかと娘への説教を止めない。
私は車に乗るのを諦めた。
そう、いま母親は教育中なのである。かなりテンションが上がっているにも関わらず、
言葉を巧みに駆使して未来あるわが子を教育しているのである。
邪魔をしてはならない。私は灰皿がある少し離れた場所へ移動し、
タバコをくゆらせながらお手並み拝見どばかりに優しい眼差しで親子を見守ることにした。
そんな矢先、女の子がとんでもない行動に打って出た。
駐車場に買い物カゴを放り投げ、その場に座り込んでしまったのである。
これぞまさしく「ゲ、ゲ、ゲのゲー!」である。
母親は両手が塞がっている。投げ捨てられた買い物カゴを拾い上げることも、女の子の手を引き上げることもできない。
さっきまでの毅然とした母親の態度は一転、全身から困惑と狼狽を放つオロオロ状態へ。
この瞬間、残念ながら勝敗は決した。
女の子の反則勝ちである。
そしてしばらくすると、なだめる母親の声を振り払うかのように、女の子は立ち上がり駆け出してしまった。
娘の名前を何度も叫ぶ母親の横をすり抜け、今がチャンスとばかりに私は車に乗り込んだ。
母親の顔を見ることができなかった。
コンビニを後にしながら「もし今日が雨ではなく、母親の両手が塞がってなければ何かが違っていたのでは」と
雨に嫌味をブツケつつ、反則勝ちというダーティーな勝利の味を知ってしまった女の子の将来を案じた……。
女の子が反則の勝ちの卑怯さ、醜さに気づく日が一日も早く訪れることを祈った。
おかあちゃんは大変なのだ。 おかあちゃんガンバレ!
ただ、あの日以来、黄色いカッパの女の子が少し怖い……