あれは確か二年前のこと、私は髭剃りの替え刃を買うためドラッグストアーに行った。
するとどうだろう、私の求める3枚刃はどこにも見当たらないではないか。
この時すでに世の中は、5枚刃が主流の新時代に突入いてたのである!!
「いったいどういうことなんだ!!」、「こんなことになるまで、私は何をしていたのだ!!」。
4枚刃の時代を体験することなく、なんと5枚刃!!
まるで浦島太郎か久々にシャバに出てきた囚人状態。
「おいて行かれちまった……時代に…」
超ド級の衝撃に、しばしその場に立ちすくむ。
そう言えば、私は髭剃りの替え刃を大人買いするところがある。
(髭が生えたオッサンなんだから、あたり前だが)
それまで使っていた3枚刃も、これからお世話になるからとタンマリ買った記憶がある。
その上、私は自慢じゃないが我慢強い。
替え刃の交換の目安は、血が出るまで。
それも痛みを伴わないと替えない。
だから1つの刃を2、3ケ月使う。
そんな悪習のお陰で、スットコドッコイの隔世状態である。
さらにデザインも劇的な変化を遂げていた。
従来のイメージでは、髭剃りと言えば単純なT字で黒だが、新しい髭剃りは一味も二味も違う。
なんだかガンダムみたいな仰々しいモノから、高級感漂うモノまで、
手にするだけで、男前度がワンランクアップするような錯覚に陥る、
流線形と個性的な色使いが主張する、イケてる男の必須アイテムの様相を呈している。
たかが髭剃りとあなどるなかれ、
そのデザイン力には男心をくすぐる強烈なパワーが溢れているのである。
やがて隔世の衝撃から目覚め、ふと疑問に思う。
1枚目や2枚目、ついでに3枚目までは毎回がんばって仕事をするだろうが、
はたして4枚目と5枚目の刃は髭に触れることがあるのだろうか?
もし4枚目と5枚目も「しっかり仕事をしてます」と自信満々に言うのなら、
いったい1枚目と2枚目と3枚目は何をやっているのだろう。
「3枚刃の時代なんか、3枚でがんばってたんだぞ!」 「5枚なんて甘えてる!!」
と昭和魂が叫ぶ!!
なんだか5枚刃の髭剃りと人間の仕事、似てるところがあるな~と少し感心しつつ、
ガンダムっぽい最新の5枚刃を購入しました。
あれからまたしばらくの間、ドラッグストアーの髭剃りコーナーを訪れていませんでしたが、
先日気になって覗いてみると、5枚刃からは刃の枚数が増えてなくてひと安心でしたが、
バイブレーションを搭載しているタイプが登場してました。
バイブって……あまりにも怖くて手に取ることができませんでした……。