私は時々事前の情報まったく無しで、ジャケットの情報のみを頼りにDVDを借りることがある。
このスリルがたまらない!! 幾度となく失敗しているにもかかわらず、やめられない。
悪癖のはじまりは、たしか中学生時代。
あの頃は輸入盤と呼ばれるレコードが全盛の時代で、その体裁はまさに輸入したまんまの状態。
とにかくジャケットには横文字だけ。
英語をはじめ、外国語がからっきしの少年にはタイトルなのかアーティスト名なのかも分からない。
不親切極まりないレコードだったのである。
とはいっても、ヒットしているジャケットのデザインは日本盤と同じことが多く、
なんとなく見たことがあるものもあり、無難を良しとする愚か者ならばそれらを手にすればよいが、
発掘・発見をなによりの喜び・使命としていた少年は、それらのヤカラに逃げることはインチキとしていた。
したがって、予備知識一切無し! 感性のみで勝負!
ジャケットのデザインセンスだけで収録曲の良し悪しをイマジンするのである。
当時のレコードはとても高価で、いっぱしの大人が買うモノ。
LP盤など中坊の1カ月や2カ月の小遣いでは手が出ないシロモノだった。
だから、それこそ手に汗握りながら半日以上ジャケットとにらめっこなんてザラ。
悩みに悩んで、ジャケットのデザインセンスに賭けて購入するのである。
そして、オヤジもオフクロもいない休日。
誰もいない時間帯を見計らって、そのイチかバチかのレコードに針を落とす。
全ての曲を聴き終わった時、それが正解とあらば、
ドーパミンが一気に噴き出し、恍惚状態。
当時の必要以上に重厚感のあるステレオのボリュームを上げて、大声で叫ぶ。
「見る目あるじゃ~ん!!」。
今から思えば、デザインというものに興味を持ち始めたのは、あの頃からだったような気がする。
で現在、レコードからDVDに変わっても、その時の癖が今だに抜けない。
時々血が騒ぐのである。
しかし、この情報化社会、雑音が多すぎて知りたくなくても情報が入ってくる。
だから、あえて情報をシャットアウトしない限り、
当時のように「無」の状態にはなりにくい。
ジャケットの裏をチラッと見ただけでも、アカデミーだのカンヌだのモントリオールだの、
葉っぱに包まれた受賞名が踊っている。
何かを受賞している作品ならまだしも、受賞できなかった作品にいたっては
「正式出品」などと、出品したことを自慢する始末。
話がそれてしまったが、そんな輝かしい情報が記載されているものを借りても意味がない。
そこそこ面白くて当然である(中には訴えてやろーかと思うほどヒドイ作品もあるが)。
あくまでも、ジャケットデザインだけで判断するのが鉄則。
ストーリーを読んだりしたら、当然ダメ。そう、デザインと会話をするのです。
コレって正解ですか?デザインだけがイケてるんですか?って。
で、先日「23年の沈黙」っていうドイツの映画を借りました。
これが面白かったんです。正解だったんです。
奇特な方はぜひ観てください。