日本テレビ界で一番感じがいい人

私はNHK「ニュースウオッチ9」のキャスター大越健介さんが、
日本のテレビ界で一番感じがいい人だと思う。
ニュースを見ていて、声のトーンがいい。
す~と無理なく情報が頭の中に入ってくる。
どこかのニュースキャスターのように、
私がキャスターだ!! 私が正義だ!! 私が番組を仕切っているのだ!!
などと無駄な個性が情報の前に出ることはありません。
そんな大越氏が新書「ニュースキャスター」を上梓したので、読んでみた。

大越氏は、1985年NHKに入社してすぐに岡山放送局に赴任していたそうだ。
岡山で4年間過ごした後、東京・政治部に移動。
その後16年間、国会や首相官邸をはじめとする政府機関の放送記者を経て、
2005年からはワシントン支局へ赴任。
オバマ・ブームで沸いた2008年の大統領選挙などを取材し、
4年間のアメリカ取材の後、東京へ戻り、
2010年から「ニュースウオッチ9」のキャスターを務めることになったそうです。

でも、ビジュアル的にまったくイケてない普通のオジサン。
日本のサラリーマンの70%を占めるであろう平凡すぎる風貌のオジサンに、
なぜNHKは看板ニュース番組を任せたのだろう……。
その答えは、彼が球児だったからではないだろうか。
大越少年は新潟高校3年の時ピッチャーとして、
春の県大会で準優勝まで勝ち上がったそうだ。
その後、野球漬けの毎日を送っておきながら東京大学に入学。

東京六大学リーグで通算8勝27敗という屈辱かつ名誉ある微妙な成績を残し、
日米大学野球選手権の日本代表にも選出さたそうだ。
野球をやりながら東大へ進学。しかも東大で8勝。
東大が勝つなんて、タイガースがヤンキースに勝つようなものですからね。
その上、日本代表に選ばれたんだから本当にスゴイ。
ダルビッシュのようにスラッとしているスタイルならまだしも、
どう見ても平均的より少し落ちる日本人体型をしている大越氏が、
当時どのような投球をしていたのかとても気になります。
想像するに決して剛速球ではなく、
バッターの打ち気を巧みにかわす技巧派だったんだと思います。
シンカーなんか投げたりしてね……ビデオがあったら見たいな~。

ということで、大越氏の感じの良さは野球を通して創り上げられたのでしょう。
失礼ですが、高校時代はたぶん大越氏以外はみんな野球バカだったと思います。
でも大越氏はそんな環境を苦にすることもなく、
野球も勉強も黙々とこなしてきたのではないだろうか。
決してスマートじゃないけど、
自分で自分を追い込んで、乗り越えてきたのでしょう(全部勝手な想像)。
そんな柔和だけどタフな人柄が、画面を通して伝わってくる気がします。

これまでベタ褒めだったのですが、本の中で少し気になったところが……
大越氏曰く、
「その判断に資するだけの事実の積み上げに、
大いに汗をかくことが私たちの使命だ。
世間を向こうに回して大上段に構えるよりも、真実は細部に宿るとの格言どおり、
事実をひとつひとつ積み上げていくしかない。そして、それぞれのルポには
『ニュースの核心』がしっかりと見えていなければならない」。
さらに、
「私は単なる伝達者であろうとは思わない。
未熟であっても、時代が求めるメッセージを自分なりに感じ、
考え抜き、発信し続ける存在でありたい」。

ちょっと待った!!

大いに汗をかくのは賛成だが、判断や核心を一方的に決めて欲しくない。
そっちが判断する前にできるだけ多くの、しかも多角的な情報が欲しい。
ニュースを伝えるのは、単なる伝達者でいいと私は思います。
ドラマチックな演出や個人的な感情は一切無用。
受けの良い見解を並べるコメンテーターとは違うんじゃないの……。
大越さん、目立とうと思ったらダメですよ。
そんなことを思いつつ、これからもストライクゾーンど真ん中の
感じのいい大越氏のままでいて欲しいと願うのであります。


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