大都会岡山での移動は車が主流なので、めったに歩くことがない。
こと歩くことに関しては、都会の人の方がよっぽど歩いているのではないだろうか。
で、たまにテクテク歩いてみると、ちょっと面白いものに遭遇することがある。
どんな犬なのか、すんげー気になる。
私が子どもの頃、通学路の一段上にある家の前を通るたびに、
ブロック塀から顔を出して吠えまくってた犬がいた。
単なるワンワンではなく、
グワングワンの後にガルルルル…ガルルルル…が付く、
“その犬凶暴につき”と思わせるには十分な吠え方とイカツイ面構え。
クサリがちぎれんばかりに必死に吠え続ける勢いと体力は、
きっと秋田犬並みのゴッツイ体格なのだろう。
こんなヤツに襲いかかられたら、ひとたまりもありません。
私は毎回その家の前を、そそくさと通り過ぎていました。
ところがある日、少年は母親にお使いを頼まれます。
何かをどこかのおばあさんに届けてほしいというミッション。
何を届けるのかはまったく覚えていませんが、
どこかが、こともあろうに“その犬凶暴につき”の家だったのです。
いつの間にか“その犬凶暴につき”の主と母親が、
フレンドリーになっていたのです。
いきなり襲い掛かる試練……。
しかし純粋に天使のように育った少年は、
母親に対しても弱味は見せたくありません。
めんどくせーを盾に抵抗してみるが、本音は違うのは本人が一番承知。
すったーもんだーがあって、
結局何かを“その犬凶暴につき”の家に届けることに……。
いい子ですね~。
※すったーもんだーの下りは覚えていないので想像です。
私のことだから、こんな感じだったことでしょう。たぶん。
おそるおそる家に近づくと、いつものように吠えはじめる。
慎重にさらに近づくと、もっと勢いよく吠える。
距離を保ちつつ未踏の領域、坂を上がり門まで近づくと、
先のグワングワン!!を後のグワングワン!!が追い越す程の勢いで連発で吠え狂う。
ブサーを鳴らすため、一歩、二歩とじんわり前進。
このミッション、早く終わらせたい……と思った時、
“その犬凶暴につき”の全貌が……
秋田犬どころか体は柴犬サイズ。顔だけが大きいイカサマ野郎だったのです。
ブザーを鳴らすと、ニコニコ笑顔のおばあさんが
「騒がしいと思ったら、わざわざ持って来てくれたん、ありがとうね」と
やさしい言葉。子どもながらに味わう達成感。
「あんた、うるさい!!」とおばあさんのケリが“その犬凶暴につき”に入ると、
「キャン」とはじめて聞くカワイイ声発して小屋へ退散。
おばあさんの笑顔に見送られながら、
『でけー面しゃーがって』の語源に思いを巡らせたことを、
この看板を見て思い出したのでありました。