BOOK OFFにてタイムスリップ

「どーして全部吸ってしまうん!!」。
「きのー買ったばかりなのに!!!」。
「そんなにしょっちゅう買うお金ないよッ!!!!」。

掘り出し物の中古DVDはないだろうかと探していた私の後頭部を、
先ほどの声がいきなり突き上げた。
驚いた私はとっさに振り返りそうになったが、
悪魔の私が驚異的な判断力でそれを止めた。
ケータイで会話しているようだが、振り返るとたぶん会話を止めてしまうだろう。
なかなか面白そうな会話だったので、続けてもらうためにもここは振り返らずにおこう。

「○○君、もっと二人の生活のこと考えてッ!!」。
「こないだ、話し合ったばかりじゃがッ!」。
「どーしていつも、こうなん……」。

期待どおりの展開だ。
岡山弁丸出し、彼女はそーとー頭にきていたのだろう、
のっけから結構な音量で話してるので、
店内の1/3の人にはこの会話が届いていることだろう。
「話し合ったこと覚えてないん」。……「なら、なんで全部吸ってしまうん!!」。
悪い男だ。彼女は二人の生活のコレカラのことを考えて、
節約しながらがんばってるに違いない。
なのに男はチャランポランで、その場だけ感じよく逃れようと話しを合わせ、
責任感のある男を演じたのだろう。
昭和のころは、こんなカップルが沢山いたもんだが、平成の世になってもまだいるんだ。
少しノスタルジックになりながら、次の展開を待った。

「なんで変われんの?」。
「どーして変われんのよッ!!」。
「分かってるなら 変わってよー」。

〝変われんの〝の三連発が心に突き刺さった。なんだか他人事でなくなってきた。
そして、あの金言が頭の片隅にぼんやりと浮かぶ。
なんだったっけ……、意識を集中し、一生懸命思い出そうと試みる……。

「私に変えるべきものを変える勇気と、変えられぬものを受け入れる寛容さと、
変えられるものか変えられないものかを見分ける知恵を与えたまえ」……。

気が付くと、ケータイの彼女はどこかえ消えてしまっていた。
私の勝手な想像だが、きっと妊娠前の黒木メイサみたいな娘だったに違いない。
帰りの車の中で、胸のポケットからタバコを取り出し。
ひと箱440円もするんだもんな~、と見つめ、そっと胸にしまった。

 

 

 

「男は黙ってセブンスター」?


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